動くものと、動かないもの
世の中にはふたつのものがあります。
動くものと、動かないものです。
動くものは、常に動いているもののことです。
動かないものは、動かされるもののことです。
といったところで、顔のおはなしをしたいと思います。
顔は、動くものです。
顔は常に動いています。みなさんが「笑顔」と聞いて思い浮かべるあの顔も、じつは常に変化しつづけています。
もし、みなさんの顔にじっと動かずに笑顔が貼りついていたら、なんだか変な気分になると思います。
やっぱり、顔は変わり続けているんです。
瞬間瞬間で変わっていくし、歳をとるごとに変わっていきます。
きっと、ほんとうにおんなじ顔は二度とないでしょう。
仮面は、動かないものです。
仮面はじっと動きません。乱暴に扱われても、丁寧に扱われても、ただじっとおんなじ顔をしています。
それはそうでしょう。
いくら仮面とはいったって、日に何度も顔が変わったら、ちょっとおそろしいですものね。
やっぱり、仮面は変わらないんです。
長い年月を重ねても、ちゃんと手入れの行き届いた仮面は、いつまでも新品のようであります。
そうしたように、動くものと、動かないものがあるわけです。
だとしたら、仮面を顔につけるということは、いったいぜんたいどういうことになるのでしょう?
答えはとっても簡単です。
動いたり、動かなかったりするのです。
仮面をかぶると、顔が動かなくなります。
しかし、首は動きます。からだだって自由です。
顔が動かなくなり、からだが動きはじめます。
ふだん、私たちは顔の表情でコミュニケーションをとりあっています。
だから、顔が動かないということはとても大変なことです。
でもじつは、私たちには顔よりも何倍も大きなからだがあります。
仮面をかぶると、からだの力がむくむくとわきあがってくる気がします。
これが、どんなに自由で楽しいことか、ぜひいろいろな方々に体験していただきたいと思っています。
大川原