一週間かけて実家のカギを開けっ放しにした

とにかく家がある

さいきん、父から家をもらいました。それにまつわるいろいろの報告をしたくて久しぶりのブログを書いています。ひとの家ならこれまでいくらでも好き勝手やってきましたが、自分の家となるとなぜかまじで大変ですね。

家をもらったといってもあたくしが生まれ育った家ではなく、岩手県は花巻にある祖母の家です。レストランと美容院と宴会場と住居が暗黒合体したキメラ物件で大変おもしろなのですが、現在は両親も離れて暮らしており管理が行き届かないため、いちばんの放蕩息子であるあたくしにお鉢が回ってきました。たいへんめんどうくさいですが、せっかくあるものを更地にしてしまうよりは何かとおもしろく遊びたいのでやっていきます。

 

もらうのたいへん

不動産をもらうにあたって(正確には”譲渡”というらしいです)、やっぱり税金のなんだかんだが大変めんどうでした。別にこのへん詳しい話は書きませんが、手続き関係、まったくの無の移動というやつがいちばん実体がなく、遊び心を含ませないと虚無のきもちになります。しかし無の移動がいちばんお金を発生させるのは世の中の不思議です。ふだんひとにやっていることはおもしろなのに、自分のことになると途端にめんどうくさいですね。

 

掃除した

「だいたい片づけたからあとは好きにしてくれ」くらいのことを父から聞いていた気がしたのですが、じっさいに現地に行ったらふつうに家財道具から何からぎっしりの埃まみれでまじでびっくり。じつは何年も前から片づけたり掃除したりはしていたのですが、遅々として進まなかったのでこんかいは思い切って一週間かけてえいやと大掃除をしにきたのです。とりあえず、宴会場が半分くらいあいたのでひとが集うことはできるようになりました。しかし、それでもまだたくさんものが残っています。

 

ガレージセール

ものが残っているならガレージセールだ。ということで家財道具一式(どころじゃない)、やたらといい着物たち(祖母は髪結いでしたので)、大川原家のアルバムや帳簿、とにかく家にあるものをすべて100円で売り払うガレージセールを催しました。

ガレージセールにはなんと通りすがりの地元の方や、東京、青森、岩手のあちらこちらからたくさんの人が参加してくださいました。なんでもあけておくの、だいじ。みんな思いがけないものを買っていきます。

そうしてひとが集まって宴会をすると(そうパーティはなによりもだいじ)、なんだか家も復活したような気になります。実際ボロボロなのは変わらないけど、だんだんと意味不明の希望が持ててきました。役所の人や地元のアーティストたち、長らく会ってなかった友人や東京のともだちも巻き込んで、「なんかやれそう」という期待だけが高まっていきます。

それに、家が使えるようになったらこれからのことを考えなければならない。その意味でも宴会は大事です。とにかくまわりのひとにこの家のことを知ってもらわなければ。でも、あたくしはもうすぐ東京に戻ってしまうし、セール品もまだいっぱい残ってるし。はてさてどうしよう。

 

カギ開けときゃいんじゃないか

旅をするとそんなふうに「もうちょっと長くいられたらな」と、毎回思うわけです。でも今回に限っては家のことなので、別にあたくしがいなくてもいいんじゃないか。そう思いいたりました。家があって、なんやかんや人が出入りしてさえいればオッケーなら、これからのことだってゆっくり考えていけばいい。そんなこんなで、思い切ってカギを開けたまま東京に戻ることにしました。

そして今回の滞在でできた友人たちや、全国のともだちに「家のカギ開けておいたからなんかてきとうに使って」と連絡をしました。水道も電気も通っていないので使い勝手はすこぶる悪いはずです。けど、家というのは使う人が自分の使いやすいように改変していくべきもの。もしも水道や電気が必要な時がほんとうに来たら、たぶん大家のあたくしに連絡が来るでしょう。(来なかったらうけますね。それでもいい)とにかく好きに出入りしてもらって、あの家がどうなっていくのか遠くから見守る係をやることにします。

カギをたまたま開けているだけなので、もちろん家賃は発生しません。誰でも好きに使っていいので、使いやすいようDIYをしたって結構です。ものがあんまり増えたり、極端な破壊行動が起きたりするのは大家としては困りますが、それにしても東京にいるので基本的には何が起きてもわかりません。

寒かったら隙間をふさげばいいし、埃がたまったら拭けばいい。絵をかいたら飾ればいいし、人が集まったら喋ればいい。そのくらいの温度感で家との関係をつくっていくには、カギをあけ放ってみるのがとりあえずは一番なんじゃないかな、と思ったわけです。

 

これからのこと

家について、これからのことを形作っていくのはどう考えても大家ではなくじっさいに周りにいる人たちです。きれいにして「貸し付ける」という選択肢もあるにはあるのですが(そしてじっさいにお金になる)せっかくもっている(とされている)ものを有効に使うには、いまのところそういうやり方ではなんだか味気ないなと思います。

とにかく、ほんの小さなステップとして一週間かけてカギを開けて帰ってきました。今後どうなるかまだあたくしが一番わかりませんが、ともだちがたくさんできたので何かおもしろくなる気がしています。

もし、行ってみたり使ってみたいという方がいればどなたでも連絡をください。好きに使っていいですよ。