商店街の仮面屋

※仮面屋おもてでは現在、実店舗を持つためのクラウドファンディングを実施しています。ご興味を惹かれた方はぜひご支援・ご協力をお願いいたします。(2016年4月19日まで)詳細はこちら

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クラウドファンディングをはじめてから、「どうしてわざわざ商店街に仮面屋をつくるの?」ということを頻繁に聞かれるようになりました。確かに当店としても、ギャラリーが立ち並ぶまちや、観光地や、もっと人通りの多い場所などにお店を出すという選択肢もなかったわけではありません。

それでもやはり商店街の中にお店を出そうと思ったのは、さまざまなご縁ももちろんありますが、日々の生活の中に仮面が立ち入ることこそが仮面屋としての大切な試みのひとつだと思ったからです。

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あたくしがお店をかまえる「キラキラ橘商店街」という通りは、地元の人たちが野菜やお肉を買いに自転車で駆けつけるような、いわゆる普段使いの商店街です。この中で仮面屋をするということは、日常の中に突然怪しげなものが立ちはだかるといったイメージで、ちょっとへんなかんじがします。このへんなかんじは一朝一夕では払拭できないし、まして仮面屋などというといかにも怪しげな感じがしますから、ますます大変です。

とはいえあたくしが仮面を売ろうというとき、なにも億万長者のコレクターだけを相手にしているわけではありません。あたくしはむしろそうした世界と並行して、日常の世界にこそ仮面というものを積極的に見出そうとしてきました。それは見えない仮面でもあるし、かたちのないものでもあるし、現象としての仮面でもあります。実際にモノとしてある仮面と、そうではない仮面、この両方を等価に扱うことこそが、仮面屋としての使命なのではないかとも考えています。

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商店街の中には、八百屋があり、肉屋や魚屋があり、整体やデイサービスがあり、カフェや花屋があります。あたくしは、その中に仮面屋が自然と溶け込む未来が想像でき、近い将来必ずそのようなことになることを確信しています。なぜなら本来仮面と向き合うことは、鏡で自分の顔を見つめることと同じくらい日常的な営みであるはずだからです。

あたくしたちの日常の生活の中には、すでにたくさんの仮面があります。しかし、それらは目に見えないもので、ふだん意識されることはあまりありません。そうした場所に、モノとしての仮面を提供することは当店の大切な業務のひとつです。そのことによって顕在化する現象それ自体をあたくしは仮面と呼ぶし、そうした現象と隣り合わせであるからこそ、モノとしての仮面は輝きを放つものなのだと思っているからです。

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仮面とは、いつまでたっても不思議なものです。
その不思議さは、日々の営みと同じくらい複雑で奇怪です。その不思議さを正面から受け止めるために、商店街の仮面屋はこれから始まっていくのだと思います。