「ぼくのかんがえたさいきょうのそうび」は「ぼく」の中にも存在しない
さいきんとうとう、仕事のご依頼を80%くらいの割合で断るようになってきました。主に仕事断る系のお仕事をしています。
※「スピード感のなさ、だいじ。」でも書いてますが、ほんとにご連絡いただいたお仕事のたぶん半分以上はお断りしています。主な理由は「生き急いでいるから」と「おもしろくないから」と「お金がないから」です。
あたくしが具体的にどのように働いている(いない)のかということ、方々でかなり正直に語っているはずなのですが、なぜかいつまでも誤解が解けないんですよね。困った。(そんなに困ってはいないか)
なので、とりあえずわかりやすいところのお仕事のお話をしようかな。ものつくりの話題です。(とはいえ、あたくし自身は「ものをつくらない」のですが)
じつは弊社、ものつくりではわりあい幅の広い範囲でご依頼を受けています。仮面のオーダーメイド以外にも、舞台や映像、イベントの小道具・大道具の制作や、店舗や公共施設のディスプレイなどもやります。そのあたりは公にしていないものが多いのでけっこうおどろかれぎみですね。
そういうものつくりの中でいちばん多い依頼のひとつに「ぼくのかんがえたさいきょうのそうび」と呼んでいる案件があります。
わかりやすくいいかえると「頭のなかでイメージしている絵(仮面)を具現化してほしい」というご依頼ですね。こういうの、がんがん断るやつです。
なぜかというと、頭の中でイメージしている絵は、そもそも存在していないんですよね。イメージというのはとても便利なので、もやっとした造形・形にすらなっていない漠然としたものでも、なんとなく「これだ!」という気になるし、形が定まっているように錯覚してしまう。でも、どれだけ言葉を尽くされてもそのイメージは絵にならないし、まして立体にはできないんです。
「ぼくのかんがえさいきょうのそうび」は「ぼく」の中にも存在しない(タイトル)
もちろん、そうしたイメージの具体化作業からお手伝いすることもありますが、それなりに時間とお金がかかるので、かなりの熱意がなければ実現しません。たとえばひとつの仮面をつくるのでも、イメージのすり合わせや確認作業を何度もしなければなりません。平面では納得できても、立体にしたとたん「なんか違う」っていうのもよくあるやつです。
さらに、細かな部分までこだわりぬけば抜くほど、必要な時間とお金と作業量が増える。考えてみれば当たり前すぎることですが、多くの場合、ご依頼される段階でそこまでは想像できないんですよね。
なので、ほとんど最初の段階でお断りします。多くは「きっとここに頼めば理想のものができあがる!」と思っていただけて大変ありがたいのですが、そういう誤解だけはどんどん切り捨てていきたいですね。
もちろん、技術や態度としては理想のものを提供できるだけのリソースはご用意しているつもりですが、そのことと「ぼくのかんがえたさいきょう」を実現できるかどうかは、ちょっと別のはなしですね。
仕事断る系のお仕事のお話でした。