仮面屋おもてをはじめた理由

仮面屋という、ファンタジーの世界にしかないようなお店をなぜはじめたのかのお話しをしたいと思います。

店主は「仮面屋」のほかに「舞踏家」という、これまたファンタジーのような肩書きを持っています。ようは、舞踏というおどりをおどるひとです。
でも、舞踏というおどりは、能や狂言のように仮面をつけておどるものでは必ずしもありません。

だから、どうして仮面に興味をもったのかというと、そういう舞台の世界に生きてきて、うそとか、ほんとうとかが、よくわからなくなってきたからだと思います。

舞台にいる自分はほんとうだけれども、ごはんを食べている自分は本当じゃないのかと聞かれたら、ほんとうだと答えるに違いありません。けれど、舞台の時間がうそだといわれたら、私にはそれを否定できません。
それに、えらいひとに、ごはんを食べている姿にもうそがあると言われたら、ああそうなのかなあと納得してしまうところもあります。

そんなことをおもいながら、縁あって、演劇の勉強などをしていると、昔からそういうことを考えてきたひとがいっぱいいて、なんだか嬉しい気分になったりしました。

そのうち、そういうことを考えるにあたって、仮面をつけていろいろ試しているひとがいるらしいことがわかりました。
キース・ジョンストンとか、ジャック・ルコックとか、そういう名前のひとたちです。

そうしたら、実は、世の中のひとがみんな仮面をつけて生活しているらしいことがなんとなくわかってきたのです。

私は、ちょっとだけうそやほんとうがわかった気がしました。

そして、実際に仮面をつけるようになって、またうそやほんとうがわからなくなりました。だから、そのことについては、ずっと考えていこうと決めました。

いま、私が思っているのは、次のようなことです。

仮面には、よい仮面とわるい仮面があります。
それらは歴史の中でなんとなくわかってきたことです。

よい仮面はよいことを起こします。
そして、わるい仮面はわるいことを起こすのです。
けれどもこの日本では、どうやら最近はわるい仮面をつけているひとが多いようなきがしました。

わるい仮面は、よい仮面のようなふりをしているからやっかいなのです。

だから、私は日本によい仮面がちょっとでも増えるようにお手伝いをしたいなと思ったわけです。

大川原

仮面屋おもて